「株の動きとマンションに魂を売りはらう」バブル景気のさなかにリリースされた、渡辺美里5枚目のアルバム。久しぶりにラックから取り出して聴いてみました。
バブル時代のイケイケでエネルギッシュな雰囲気という意味では前作「ribbon」に譲るかもしれませんが、こちらも負けず劣らずの佳作揃いです。どうしても前作と比較されることが多く、どちらかといえば地味な印象を持たれてしまうのが残念です。とはいえ、NYとLAで行われた海外レコーディングはもちろん、国内外の名うてのミュージシャンが数多く参加している点では、やはりバブル時代の作品であることは間違いありません。そして忘れてならないのが、ミニ写真集付きの初回限定品。パラパラとめくってみましたが、裏表紙の世界貿易センターを見つけて切なくなってしまいました。
それはさておき、こうしてオッサンになって改めて聴いてみると、少々恥ずかしくなってしまう歌詞も所々ありますが、「ribbon」よりも一歩引いた落ち着きが感じられ、それがこの作品の魅力なのではないかと気づきました。#1「NEWS」のハジケたブラス、歌詞が沁みる#6「彼女が髪を切った理由」、#11「すき」はピチカートと大江千里のコーラスが印象的などなど、各々の出来は言うまでもなく、トータルとしても内容の濃さを感じました。
こうしている内にも、初めてこのアルバムを手にした頃のあんなことやこんなことが、あれこれとフラッシュバックして来るのでした。